2016年1月27日水曜日

港湾サービスのプロ集団「早駒運輸」 その2 2015/12/2


インタビュー「神戸港は僕らが守る」


船長 岡本大介さん

班長 寺坂昌明さん






一般の人にはあまり知られていない世界ですが、このお仕事のどういうところにやりがいがありますか? 


寺坂 神戸人は神戸が大好きなんです ()。もちろん私も神戸が大好き。だけど、会社に入るまで海とはかかわりがなかった。けれど今はこうして港町神戸の原点である神戸海に関わる仕事に携わっている。神戸港から外国の物資などが入ってきて、それが神戸やいろんなところに届けられてなんらかの役割を果たして私たち日本人の暮しを支えている。反対に、日本で作ったものを外国へ出していくのも神戸港。神戸で“神戸らしい仕事”をさせてもらえているのはすごくうれしいことです。


岡本 神戸は観光と港の街だけれど、そのうちの港を僕たちがまかなっています。神戸港で何かがあれば僕らがとんでいく。そうすれば何とかなる、“神戸港を守っているのは僕ら”という気持ちで仕事をしています。

実際に仕事をしていて大変なことはありますか?

岡本 最近、中国人の観光客の爆買いが話題になっていますが、いっぱい買い物を持って乗船する中国人の人たちを見て私たちも国際都市神戸を実感しています。ところで、僕たちはタグボートを操縦する際、外航船のキャプテンとトランシーバーを使って会話をします。お互い顔も見えず身振り手振りをすることができない中でのやりとりですから、言語の壁を感じますね。中には何の指示も出さないキャプテンもいるので、そんな時はこちらからそっとタグボートで押したりして事故が起こらないようにしています。もし何かあったらこちら側の責任になってしまうので、フォローしながら作業しています。

寺坂 なんといっても1年36524時間の仕事ですからね。日常のことで言えば、朝が早い。9時から仕事開始といっても“9時には船を動かす”ということだから、早く仕事場に来て準備をしなければいけない。仕事場に早く来ようと思ったら家を出るのはもっと早い。冬場なんかまだ暗いうちから家を出ます()
仕事が始まったらチームでやる仕事だから連携が大切。個人で突っ走ってしまうと事故や怪我につながるし、命を落とすことだって有り得る。それだけ危険と隣り合わせの仕事だから、常に警戒しています。その分、仕事がうまくいくと気持ちがいいし「今日も1日無事に終わったな」と安堵します。



今日も神戸港で活躍する早駒運輸のタグボート

そんなに危険な仕事なんですね…知りませんでした。

寺坂 ほかにも台風のときなんかも、船を岸壁に着けていたら波風で船が傷ついてしまうから沖に出て波風に揺られながら台風が去るのを待ちます。

台風が発生する夏が特に大変ということですか?

岡本 台風は発生すると、ある程度進路や威力がわかるから前もって対策することができます。それよりも、今みたいな冬の時期の強風や爆弾低気圧が厄介です。あらかじめ対策を打つことが難しい。だから、どっちかというと冬のほうが大変ですね。

寺坂 風の強い日なんかは停泊していても風や波の影響でロープが切れてしまうことがある。そういうときはロープが切れないようにタグボートで押してもらったりしています。お互い助け合っています。

岡本 穏やかな日は太陽が沈むのを見て「いい仕事だなあ」って思うけど、台風とかの日は「なんでこんな仕事してんねん!」って感じです()

20年前、神戸は阪神淡路大震災で被害を受けましたが、震災後はどんな変化がありましたか?

寺坂 震災前は神戸は元気で、ポートアイランドや六甲アイランドができて船業も勢いがあった。震災のときは港が大きな被害を受けて岸壁もめちゃくちゃに崩れてしまい、船も入ってくることができずつらかったです。いまは復興してくれてうれしいし、こうやって仕事をできることがすごくありがたいです。

震災後は?

寺坂 震災前は新入社員が入ってきていたけれど、最近では船に乗りたがる若い人たちが減ってきていています。仕事をしている人は減っているけれど、船数は震災後より増えてきているんですけどね。

岡本 一般の方にはあまり浸透していない職種かもしれないけれど、船員の高齢化や船員不足が進むと神戸港が廃れてしまうし、神戸港が廃れてしまうと日本の物流がストップしてしまう。だからこそ若い人にも入ってきてほしいなとは思いますね。

お忙しいところどうもありがとうございました。


取材・有馬瑞貴

取材協力:早駒運輸株式会社(http://www.hayakoma.com/